最終更新: 2026-07-19
浜松に、日本全国の天ぷら通が注目する店が2軒並んでいることを知っているだろうか。食べログが毎年発表する「天ぷら百名店」に、同一市内から2店が選出されるのは全国でも珍しい。「好し智(よしとも)」2025年選出、「天錦(てんきん)」2023年選出——この2店はどちらも浜松市中心部の第一通り周辺にある。なぜ浜松にこれほどの天ぷら文化が根付いているのか、と疑問に思う人も多いはずだ。その答えは、浜名湖と遠州灘という二大食材の宝庫にある。7月はうなぎ・はも・あなごが旬を迎え、浜名湖の養殖うなぎを天ぷらにして揚げる体験は、他の地域では得難い。この記事では、浜松の天ぷら名店を予算別・スタイル別に5店厳選し、各店の特徴・予算・予約方法を比較表付きで解説する。まず浜松の食材力を整理し、次に各店を詳しく紹介し、最後にシーン別の選び方をお伝えする。
浜松で天ぷらが輝く理由——遠州灘・浜名湖の食材力

天ぷらの善し悪しは、素材で7割が決まると言われる。浜松がその点で圧倒的に有利な理由を整理しておく。
浜名湖は日本のうなぎ養殖の発祥地だ。1879年(明治12年)、服部倉次郎が浜名湖での養鰻を始めたとされており、それから140年以上にわたって日本のうなぎ産業を支えてきた(浜松市公式サイトほか)。夏の土用の丑の日に食べるうなぎの多くは、浜名湖周辺の産地とのつながりが深い。天ぷらとして仕立てると、うなぎの脂の甘みが薄い衣に包まれ、さっぱりとした夏の一品になる。
遠州灘は太平洋に面した好漁場で、きす・あじ・平目・桜えびなどが揚がる。夏のきす天は、遠州灘産の活きのいい個体を使うことで身の甘みが段違いになる。浜松の天ぷら専門店がこれほど評価を得る背景には、毎朝仕入れられる地元の新鮮食材がある。
| 7月に旬を迎える浜松・遠州の食材 | 天ぷらでの特徴 |
|---|---|
| うなぎ(浜名湖産) | 脂の旨みが衣に染み出す。好し智では希少な天ぷら仕立て |
| はも(遠州灘) | 骨切りなしでも衣に包むと骨が気にならない。夏の高級食材 |
| あなご | うなぎに比べてさっぱり。夏の暑さに合う一品 |
| きす(遠州灘) | 江戸前天ぷらの定番。浜松では地物で揚げる |
| 青しそ・とうもろこし | 野菜天の主役。甘みが増す夏の旬野菜 |
気象庁の平年値(1991〜2020年)によると、浜松市の7月の平均気温は26.7度。揚げたてを口にする快適な室内環境を整えた天ぷら専門店で、夏の旬を受け取ることが、浜松の天ぷら体験の核心にある。
なお、同じ静岡県内でも静岡市の天ぷら事情は天ぷら 静岡エリアガイドに詳しくまとめているので、静岡市訪問の場合はあわせて参照してほしい。
浜松の天ぷら名店 比較一覧

今回紹介する5店の全体像を先に一覧で示す。情報はすべて2026年7月時点の公開情報に基づく。訪問前に公式サイト・予約サイトで最新情報を確認してほしい。
| 店名 | エリア | 予算目安 | スタイル | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|
| 好し智(よしとも) | 田町・第一通り | 15,000〜19,999円(夜) | カウンターおまかせ | 食べログ天ぷら百名店2025。予約困難 |
| 天錦(てんきん) | 田町・第一通り | ランチ1,100円〜/夜4,000円〜 | カウンターおまかせ+天丼 | 食べログ天ぷら百名店2023 |
| 美松(みまつ) | 千歳町 | 夜おまかせ | 掘りごたつ式カウンター | 浅草修業の3代目。5種の付けダレ |
| 天はる | 富塚エリア | ランチ天丼 | 定食・天丼 | 創業当時から秘伝のタレを守る |
| 天麩羅えびのや(イオン浜松市野) | 市野 | 1,000〜2,000円 | 定食・天丼 | 注文後に目の前で揚げるスタイル |
【最高峰】好し智(よしとも)——食べログ天ぷら百名店2025の予約困難店

浜松でいま最も予約が取れない天ぷら店を一店挙げるなら、好し智の名前がまっさきに上がる。2019年の開業以来、わずか数年で食べログ天ぷら百名店に選出され、2022年8月には現在の田町エリアに移転。移転後も予約は取りにくく、数ヶ月先まで埋まっていることが珍しくない。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 住所 | 浜松市中央区田町325-6 小島屋ビル1階奥 |
| アクセス | 遠州鉄道・第一通り駅から徒歩約2分 |
| 電話 | 053-450-5510 |
| 営業形態 | 予約制おまかせコースのみ |
| 予算目安 | おまかせコース14,300円(税込)/夜のみ |
| 席数 | カウンター8席 |
| 受賞歴 | 食べログ天ぷら百名店2025選出 |
好し智の技術的な特徴は「高温と低温、2本の鍋を使い分ける」点にある。一般的な天ぷら専門店が1本の鍋で食材の種類に合わせて温度を調整するのに対し、好し智では最初から2本の鍋を並べ、素材の性質によって揚げる鍋そのものを変える。高温鍋で水分を一気に飛ばすべき食材と、低温でじっくり火を入れるべき食材を明確に分けることで、衣のサクサク感と食材の火入れを両立している。
浜名湖産のうなぎを天ぷらにして提供することもある(季節・仕入れ状況による)。うなぎの天ぷらはかば焼きとは全く異なる食体験で、脂の甘みを衣が包み込むことで、さっぱりとした夏の一品になる。初めて訪れる方には、7月は遠州灘の夏の旬食材がコースに入りやすい時期として外せない。
予約は食べログや「予約困難店」系の予約サービスからが主流だが、電話での問い合わせも受け付けている。複数月先からの枠を常にチェックする粘り強さが、好し智の予約を勝ち取る鍵だ。食べログ天ぷら百名店の選出基準や全国の名店情報も、合わせて確認してほしい。
【実力派】天錦(てんきん)——浜松で天丼といえばここ、百名店の実力
「浜松でいちばん美味い天丼はどこか」と地元の人に聞けば、まず天錦の名が返ってくる。1,100円のランチ天丼(赤だし付き)は長らく浜松のコスパ最高の一品として語られ、食べログ天ぷら百名店にも2023年度選出されている。「百名店に選ばれた天丼を千円台で食べられる」というインパクトは、全国レベルで見ても稀有だ。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 住所 | 浜松市中央区田町325-29 |
| アクセス | 遠州鉄道・第一通り駅から徒歩約5分 |
| 営業時間 | ランチ 11:00〜14:00 / ディナー 17:00〜20:00 |
| 定休日 | 水曜・第2木曜 |
| 席数 | カウンター8席 |
| 受賞歴 | 食べログ天ぷら百名店2023選出 |
| 予算 | ランチ天丼(赤だし付)1,100円〜 / 夜 天ぷらコース4,000円〜 |
天錦の特徴は「浜名湖・遠州灘の地場食材へのこだわり」だ。店主は地元の新鮮食材を毎朝仕入れ、揚げ方を食材ごとに細かく調整する。ランチでは天丼スタイルでそのエッセンスを1,100円から体験でき、夜のコースでは天ぷらをカウンターでひとつひとつ揚げながら提供する形式に変わる。
トリップアドバイザーの口コミでは5点満点中4.4の評価を得ており、海外からの観光客も「静岡訪問で浜松を外してはいけない」と評している(2026年7月時点)。浜松駅から少し歩くが、田町周辺には好し智も位置しており、エリアとして天ぷら文化が集積している。
なお、好し智・天錦ともに好き智と同じカウンター8席という規模感なのは偶然ではない。職人が一人でコントロールできる最大人数が8名前後というのは、高品質な天ぷら専門店のひとつの定石であり、その意味でも浜松の2店は「小さくて濃い」天ぷらの世界を体現している。
【職人の美学】美松(みまつ)——浅草修業の3代目が守る千歳町の隠れ名店
浜松駅から歩いて15分ほどの千歳町に、地元の食通だけが知る天ぷら専門店がある。「美松(みまつ)」だ。もともと先代が寿司屋として営んでいた店を、東京・浅草の天ぷら専門店で修業を積んだ3代目の竹尾和孝氏が、約20年前に天ぷら専門として再構築した。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 住所 | 浜松市中央区千歳町11 |
| 電話 | 053-452-2228 |
| 営業時間 | 18:00〜 |
| 定休日 | 日曜日 |
| 席形態 | 掘りごたつ式カウンター(靴を脱いで上がる) |
店内は靴を脱いで畳に上がり、掘りごたつ式の座り方でカウンターに向かうという、他にはない設えが特徴だ。料亭のような静謐な空間で、揚げたての天ぷらを受け取る。付けダレが5種類(大根おろし・天つゆ・抹茶塩・塩・山椒塩)用意されているのも珍しく、同じネタを複数の味わいで比較できる。
浅草修業という経歴が語るのは、江戸前天ぷらの正統を受け継いでいるということだ。浅草は江戸時代から天ぷらの本場として知られ、江戸前天ぷらの歴史を体感できる店が集積している。その技術を浜松に持ち帰り、地元食材と掛け合わせた結果が、美松のスタイルに凝縮されている。夜のみの営業で、電話予約が基本のため、事前に連絡してから訪問することを強くすすめる。
【地元の日常食】天はる・天麩羅えびのや——身近に通える浜松の天ぷら
高級専門店ばかりが天ぷら文化を支えているわけではない。浜松の天ぷら文化の厚みは、日常的に通える店があってこそ成り立っている。
富塚エリアにある「天はる」は、創業当時から変わらない秘伝のタレを守り続ける天丼・天ぷら定食の店だ。地元住民から長く愛され、ランチタイムのみの限定提供(11:30〜13:30)が食欲をかきたてる。タレの色は濃いめで、ご飯との相性が抜群。秘伝のタレが何十年も変わらないという事実が、地元の信頼を積み重ねてきた。
イオンモール浜松市野店内の「天麩羅えびのや」は、注文後に目の前で揚げるスタイルで、1,000〜2,000円の価格帯で本格的な揚げたてを楽しめる。買い物のついでに本格天ぷらが食べられる利便性は、浜松の天ぷら人口を底上げしている存在といえる。
予算別・シーン別 浜松の天ぷら選びガイド
浜松の天ぷら店は、予算帯が幅広く分散している。シーンと予算に合わせて選べる一覧を示す。
| シーン | おすすめ店 | 予算目安 | 予約の要否 |
|---|---|---|---|
| 特別な記念日・接待 | 好し智(よしとも) | 15,000〜20,000円 | 数ヶ月前からの予約必須 |
| 浜松を代表する百名店体験 | 天錦(てんきん) 夜 | 4,000〜8,000円 | 事前予約推奨 |
| 地元食通御用達の隠れ名店 | 美松(みまつ) | 〜10,000円程度 | 電話予約必要 |
| 百名店をランチで手軽に体験 | 天錦(てんきん) 昼 | 1,100円〜 | 予約不要(先着) |
| 日常・ショッピングついでに | 天麩羅えびのや・天はる | 1,000〜2,000円 | 不要 |
カウンターおまかせの高級店と、ランチ天丼の地元店の両方が同じ地域に揃っている点が、浜松の天ぷら文化の懐の深さを示している。天ぷらコースを予約する際の予算感については天ぷらコースの予算を解説した記事でも詳しく確認できる。
浜松の天ぷらを深く楽しむために——季節と職人の修業系譜
浜松の天ぷら体験をより豊かにするために、2点を覚えておいてほしい。
まず季節の読み方だ。浜名湖周辺の食材は月によって旬が変わる。7月のうなぎ・はも・あなご・きすに対して、9月以降はさんまや秋の野菜天、冬にはふぐの白子天が登場する専門店もある。訪問前に「今の季節は何が旬か」を把握してから予約すると、おまかせコースへの期待値が大きく上がる。
次に職人の修業系譜だ。好し智・天錦・美松の3店はそれぞれ異なるルーツを持つ。好し智は高温・低温2鍋という独自哲学、天錦は地元の日常食文化に根ざした百名店、美松は浅草江戸前の正統を浜松に持ち込んだ形。同じ浜松の天ぷらでも、3店は全く異なる「天ぷら観」を持っている。1軒だけで判断せず、複数の店を訪問することで、自分の好みと天ぷらの奥深さが同時に見えてくる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 浜松で一番予約が取れない天ぷら店はどこですか?
好し智(よしとも)が最も予約困難な店として知られています。食べログ天ぷら百名店2025選出のカウンター8席のみの専門店で、数ヶ月先まで予約が埋まっていることが多いです。電話(053-450-5510)や予約サービスでこまめにチェックするか、キャンセル待ちを狙うのが現実的な方法です。
Q2. 浜松で天丼を安く食べるならどこがおすすめですか?
天錦(てんきん)のランチ天丼(赤だし付き1,100円)がコスパ最高の選択です。食べログ天ぷら百名店選出の実力店でありながら、ランチは1,100円から楽しめます。営業時間は11:00〜14:00で、混雑することが多いため早めの来店を推奨します。
Q3. 浜松で天ぷらを食べるのに最適な季節はいつですか?
7月はうなぎ・はも・あなご・きすが旬を迎え、浜名湖・遠州灘の海の幸が最も充実する時期です。浜名湖は日本のうなぎ養殖の発祥地(1879年創業)であり、この時期のうなぎを天ぷらで味わうのは浜松ならではの体験です。ただし名店は季節を問わずどの時期も水準が高く、秋以降のさんまや冬の食材も素晴らしい天ぷらになります。
Q4. 初めて浜松で天ぷらを食べるならどの店から始めるべきですか?
まずは天錦(てんきん)のランチ天丼から始めることをおすすめします。食べログ百名店の実力を1,100円で確認できるため、浜松の天ぷらレベルを手軽に体感できます。次のステップとして、美松で夜のおまかせを予約し、さらに上のレベルとして好し智を目指す——というステップアップが理想的です。
Q5. 浜松の天ぷら専門店はどのエリアに集中していますか?
田町・第一通り周辺エリアに好し智と天錦が集中しており、浜松の天ぷら激戦区といえます。美松は千歳町でやや離れた場所ですが、徒歩圏内でまわれる範囲です。浜松駅を起点に、田町・第一通り駅方面に歩けば、複数の天ぷら名店を1日でまわる計画が立てやすいエリアです。
参考情報
- 食べログ「天ぷら百名店2025」好し智掲載(2025年発表)
- 食べログ「天ぷら百名店2023」天錦掲載(2023年発表)
- トリップアドバイザー 浜松レストランランキング(2026年7月時点)
- 浜松市公式サイト「浜松のうなぎのヒミツ」はままつフードパーク(2026年7月閲覧)
- 気象庁 過去の気象データ(平年値: 1991-2020年平均)浜松市7月平均気温
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