「全国人口最少の県に、なぜこれほどの天ぷらの名店があるのか」——天麩羅 我天を初めて訪れた食通の多くが、そう感想を漏らす。
鳥取市の駅前商店街に店を構える天麩羅 我天は、ミシュランガイド京都・大阪+鳥取2019年版に掲載された、山陰を代表する天ぷら専門店だ。穴子や海老をはじめとした海鮮ネタを豪快に盛り込んだ「海鮮天丼」は、この地で長年愛され続けてきた看板料理である。
注文を受けるたびに一から揚げる「通し揚げ」、市販粉を一切使わない独自配合の衣、毎朝その日の気候を見てブレンドする胡麻油——こうした職人気質のこだわりが、都市部の有名店に引けを取らない天ぷらの品質を、鳥取の地に根付かせてきた。
この記事では、天麩羅 我天の成り立ち・職人のこだわり・メニューと価格体系・鳥取の旬食材との組み合わせ・アクセス情報まで、余すところなく解説する。
天麩羅 我天とは——鳥取に根付いたミシュラン掲載の天丼専門店

鳥取駅前に構える海鮮天丼の名店
天麩羅 我天は、鳥取市栄町725番地、駅前サンロード三番街ビル2階に位置する天ぷら専門店だ。JR鳥取駅北口から徒歩わずか3分というアクセスの良さから、地元の常連客だけでなく、砂丘観光などで鳥取を訪れる観光客にも広く知られている。
鳥取県は全国47都道府県の中で最も人口の少ない県であり(令和7年国勢調査速報値では約54万人)、外食産業の競争環境は都市部とは大きく異なる。にもかかわらず、我天がミシュランガイドに掲載されるほどの評価を受けた背景には、都市部の繁盛店に負けない「本物の天ぷら」への執念がある。
「ミシュランガイド京都・大阪+鳥取」2019年版掲載の意味
2019年に初めて刊行されたミシュランガイド京都・大阪+鳥取は、鳥取県初のミシュランガイドとして大きな注目を集めた。それまでミシュランの掲載エリア外であった鳥取の食文化が、初めて国際的な評価基準にさらされた歴史的な版である。
天麩羅 我天はこの初年度版に掲載され、鳥取の天ぷら文化を代表する存在として認められた。観光立県として知られる鳥取にとって、この掲載は「食でも来るべき場所」という新たな訴求軸を加える出来事となった。
店名「我天」に込められた思い
「我天(がてん)」という店名は、古語・方言としての「合点(がてん)」——つまり「納得・理解する」という言葉と、天ぷらの「天」を組み合わせた造語とも受け取れる。「この天ぷらなら、お客様に心から合点がいってもらえる」という職人としての自信が、二文字に凝縮されているようだ。
また「我天」の「我」には、他店の模倣ではなく「我が道」を貫く天ぷら職人としての独自路線への意志も読み取れる。市販の天ぷら粉を使わず、揚げ油を毎朝ブレンドするという哲学は、まさにその名に恥じない姿勢だ。
我天の三つのこだわり——衣・油・通し揚げ

こだわり1:市販粉を一切使わない自家配合の衣
天麩羅 我天の衣は、市場で広く流通する天ぷら粉(プレミックス粉)を使わない。使うのは卵・小麦粉・冷水だけ。それもただ混ぜるのではなく、「卵の割合を多めにした」独自配合で仕込んでいる。
市販の天ぷら粉は揚げやすさや安定性を優先して設計されているため、誰が使っても一定レベルの仕上がりが得やすい。一方で、衣独自の「美味しさ」を出そうとすると、どうしても素材の配合から向き合う必要がある。我天の衣は「衣そのものが美味しい」という信念から生まれたものだ。
| 項目 | 天麩羅 我天の選択 | 理由 |
|---|---|---|
| 衣の素材 | 卵・小麦粉・冷水のみ | 衣本来の美味しさを追求 |
| 配合のポイント | 卵の割合を多めに | コクと風味を衣に付与 |
| 市販粉の使用 | なし(一切不使用) | 他店との差別化・衣の独自性 |
卵を多めに使った衣は、揚げ上がりにほのかな甘みとコクが加わり、食材との一体感が高まる。同時に、揚げた直後のサクッとした食感をしっかりと持続させる効果もある。繊細な衣ゆえ、職人の温度管理と手際が問われるが、それが「手揚げにしか出せない味」として結実している。
こだわり2:毎朝気候を確かめてから油をブレンドする
揚げ油の柱として使われるのは胡麻油だ。胡麻油は江戸前天ぷらの伝統的な揚げ油であり、独特の芳ばしい香りと深い色合いが天ぷらに品格を与える。ただし温度管理が繊細で、職人の経験と感覚が問われる油でもある。
特筆すべきは「毎朝の気候に合わせてブレンドする」という習慣だ。夏と冬では気温と湿度が異なり、同じ配合の衣や油でも仕上がりが変化する。真夏は高温多湿のために衣がだれやすく、冬は空気が乾燥して油の温度管理が難しくなる。こうした季節や天候の変化を毎朝の判断で吸収しているのが、我天の油へのこだわりだ。
「同じ天ぷらは二度と揚げられない」——プロの職人ならではの感覚が、この毎朝のブレンド作業に表れている。
こだわり3:注文を受けてから揚げる「通し揚げ」
揚げ置き(事前に揚げてストックする)を一切行わず、注文のたびに揚げる「通し揚げ」を徹底している点も、我天の大きな特徴だ。
揚げ置きは効率の面では有利だが、天ぷらの命であるサクサク感は揚げてから時間が経つほど失われる。衣に水分が染みてベタつき、本来の軽やかな食感が消える。一方で通し揚げは、待ち時間は生じるが、お客の手元に届く時点で天ぷらが最もおいしい状態にある。
さらに我天では、出汁・味噌汁・漬物まで手作りにこだわっている。添え物の一つ一つにも手間をかけることで、天ぷらを「主役」として引き立てる食事全体の質を高めている。
我天のメニュー全解説——ランク別天丼と天重、弁当まで

ランク制の海鮮天丼——具材が変わる四段階の楽しみ方
我天の看板メニューは「海鮮天丼」で、搭載する天ぷらの内容によっていくつかのランクが設定されている。穴子と海老を中心に、季節のネタが組み合わされる構成だ。最上位ランクは真牡蠣の大葉包み・あなご一本揚げ・えび二尾・野菜二種と内容が充実しており、価格は参考価格で2,500〜2,600円前後(時期・仕入れにより変動)。
各ランクでは、使用するネタの本数・種類・質が変化する仕組みになっており、予算に合わせて選べる点が幅広い客層に受け入れられる理由の一つだ。
| メニュー | 主なネタ内容(参考) | 参考価格 |
|---|---|---|
| 海鮮天丼(定番) | 穴子・海老 | 2,100〜2,400円前後 |
| 海鮮天丼(海老・牡蠣追加) | 穴子・海老・真牡蠣 | 2,600〜2,700円前後 |
| 天重(海老) | 海老天ぷら中心 | 2,000円前後 |
| 天重(穴子) | あなご天ぷら中心 | 2,400〜2,500円前後 |
| 海鮮かき揚げ弁当 | 海鮮かき揚げ(弁当形式) | 2,040〜2,200円 |
※価格は取材時の参考値。季節や仕入れ状況により変動あり。最新情報は店舗に直接ご確認ください。
冬の名物「牡蠣天丼」——季節限定の逸品
冬季限定で登場する「牡蠣天丼」は、鳥取の旬の牡蠣を使った季節メニューだ。真牡蠣は一般的に秋から冬(9〜2月)にかけて旨みが増す。この時期に合わせた限定丼は、牡蠣の濃厚な甘みと天ぷらのサクサク感が融合した一品で、毎年楽しみにする常連も多い。
鳥取の牡蠣といえば、夏の天然岩ガキ(7〜9月・賀露港周辺)が特に名高いが、冬の真牡蠣もこの地域では良質なものが入手できる。我天の牡蠣天丼は、こうした鳥取の海産物文化との接点でもある。
女将のおすすめ——かき揚げ弁当の二段階の楽しみ方
女将が特におすすめする「海鮮かき揚げ弁当」には、ユニークな楽しみ方が提案されている。まず前半はかき揚げをそのまま天丼として味わい、後半は残ったご飯をお茶碗に移して海苔とわさびをのせ、緑茶をかけて「天茶漬け」として楽しむ方法だ。
一つの弁当で二つの食べ方を体験できるこのスタイルは、かき揚げの食感変化を楽しむだけでなく、お茶の渋みがかき揚げの油をさっぱりとさせる食の知恵でもある。天ぷら通のみぞ知る贅沢な食べ方として、ぜひ一度試してほしい。
鳥取の旬食材と我天の天ぷら——山陰が誇る海の幸

境港の水産物が支える海鮮の質
我天の海鮮天丼の美味しさを語るうえで、鳥取・島根の食材事情を無視することはできない。鳥取県東部の鳥取港・賀露港、そして島根県との県境近くの境港(さかいみなと)は、日本海有数の漁港として知られる。
境港は特にカニ類や近海マグロ、アカイカ(スルメイカ)の水揚げで名高く、全国でも有数の漁業基地だ。松葉ガニ(ズワイガニ)は11月〜3月が解禁シーズンで、山陰を代表するブランド食材として君臨している。こうした豊かな水産地帯を後背地に持つことが、我天の海鮮食材の安定した品質につながっている。
天ぷらに映える鳥取の海産物
| 食材 | 旬の時期 | 天ぷらとの相性 |
|---|---|---|
| 岩ガキ(天然) | 7〜9月(夏) | 大ぶりで旨みが濃い。天ぷらにするとジューシーさが際立つ |
| 真牡蠣 | 9月〜2月(秋冬) | コクと甘みのバランスが良く、我天の冬メニューに使用 |
| アナゴ(穴子) | 6〜8月(夏〜秋) | 脂がのり、天ぷらにすると旨みが衣の内側に凝縮される |
| シロギス | 6〜8月 | 淡白で上品な白身。薄衣との相性が抜群 |
| アゴ(トビウオ) | 夏(鳥取の県魚) | 鳥取の特産。練り製品だけでなく天ぷらでも味わえる |
| 砂丘長芋 | 秋〜冬 | 鳥取砂丘の特産品。とろろだけでなく天ぷらにしても絶品 |
鳥取砂丘長芋は、砂質土壌で育つため繊維が細かく、粘りが強いのが特徴だ。スライスして衣をつけて揚げると、外はサクッと内側はとろりとした独特の食感になる。天ぷらのネタ全解説では、食材別の揚げ方コツをまとめているので、あわせて参考にしてほしい。
なぜ我天の穴子が絶品なのか
我天の海鮮天丼の主役の一つである穴子(アナゴ)は、夏から秋にかけて旬のピークを迎える。この時期の穴子は脂がのり、身がふっくらと柔らかくなる。
穴子天ぷらを揚げる際の最大の課題は「水分」だ。穴子は身に水分を多く含んでいるため、衣が破れやすく、油がはねやすい。これを防ぐため、職人は打ち粉(薄力粉)を丁寧にまぶし、衣を薄く均一につけてから高温の油で素早く揚げる。
我天では通し揚げで一尾ずつ丁寧に揚げるため、穴子の身がふんわりと仕上がり、衣のサクッとした食感とのコントラストが生まれる。これが「穴子天重(あなごてんじゅう)」に高い評価が集まる理由だ。
我天の職人技から学ぶ——自宅で天ぷらの質を上げるポイント
我天のこだわりは、自宅での天ぷら調理にも応用できるヒントに満ちている。以下の三点を意識するだけで、家庭の天ぷらは大きく変わる。
ポイント1:衣に卵の黄身を多めに使う
市販の天ぷら粉ではなく、薄力粉と冷水(または炭酸水)と卵を自家配合する際は、卵黄を通常より少し多めに使うことで衣にコクが生まれる。ただし入れすぎると衣が重くなるため、バランスを見ながら試してほしい。
天ぷら衣サクサクのコツでは、衣の配合と揚げ方の関係を詳しく解説している。
ポイント2:揚げ油は「胡麻油ブレンド」を試す
市販の揚げ油(サラダ油)だけでなく、胡麻油を1〜2割加えてブレンドすると、香りと深みが増した天ぷらに仕上がる。ただし胡麻油は発煙点が比較的低いため、温度管理に注意が必要だ。
天ぷら用油のおすすめ選び方では、各種揚げ油の特性と選び方を詳しく解説しているので、参考にしてほしい。
ポイント3:作り置きせず「揚げたて提供」を徹底する
家庭での天ぷらパーティでも、揚げてすぐに食べることを優先しよう。数本ずつ揚げて、すぐに食卓に出す「通し揚げ」方式が、サクサク感を最大化する。食べる人が少ない場合は、一人分ずつ揚げていくスタイルを採用するのもよい。
天ぷら揚げ方の基本コツでは、家庭でも実践できる揚げ方の要点を7つのポイントにまとめている。
アクセス・営業情報・来店前に確認したいこと
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 店名 | 天麩羅 我天(てんぷら がてん) |
| 住所 | 鳥取県鳥取市栄町725 駅前サンロード三番街ビル2F |
| 電話 | 0857-22-1668 |
| アクセス | JR鳥取駅北口より徒歩約3分 |
| 定休日 | 日曜日 |
| 営業曜日 | 月曜〜土曜 |
| 駐車場 | なし(近隣にコインパーキングあり) |
| 掲載 | ミシュランガイド京都・大阪+鳥取2019年版 |
鳥取観光と組み合わせたプラン
鳥取駅から徒歩3分という立地の良さを活かして、鳥取観光と組み合わせるプランが人気だ。鳥取砂丘(駅からバスで約20分)は国内最大の砂丘で年間200万人が訪れる観光スポット。砂丘での散策後に鳥取駅前へ戻り、我天の海鮮天丼で旅の締めくくりとするプランは、観光ガイドや旅行口コミでも定番として紹介されている。
また、鳥取は梨(二十世紀梨・新甘泉など)の産地としても知られ、秋には梨狩り体験も楽しめる。旅の目的に合わせてスケジュールを組み合わせてほしい。
来店前に知っておきたいこと
通し揚げを徹底しているため、混雑時は待ち時間が生じることがある。特にランチの混雑時間帯(12時〜13時)は行列になることも。時間に余裕を持って訪問するか、開店直後や13時以降の訪問が快適だ。
人気の穴子天重やランク上位の海鮮天丼は売り切れることもあるため、食べたいメニューがある場合は早めの来店を心がけたい。テイクアウトも対応しており、鳥取観光の途中にお弁当として持ち歩くことも可能だ。
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まとめ:なぜ鳥取に「日本一の天丼」を食べに行くのか
天麩羅 我天が示しているのは、「場所は関係ない」という事実だ。東京や大阪でなくとも、職人の哲学と地域の素材への敬意があれば、ミシュランに掲載される天ぷらは生まれる。
市販粉を使わない自家配合の衣、毎朝の気候でブレンドする胡麻油、注文のたびに揚げる通し揚げ——これらは都市部の天ぷら名店が採用する手法と何ら変わらない。それを鳥取の駅前、日本海の旬食材に向き合いながら実践してきた結果が、ミシュラン掲載という評価に結実した。
天ぷら名店ランキングやカウンター天ぷら名店ガイドも参照しながら、全国の天ぷら名店を巡る旅の一つに、ぜひ鳥取・我天を加えてほしい。
よくある質問(FAQ)
Q1. 天麩羅 我天はどこにありますか?
鳥取県鳥取市栄町725番地、駅前サンロード三番街ビル2階です。JR鳥取駅北口から徒歩約3分でアクセスできます。
Q2. 我天の定休日はいつですか?
日曜日が定休日です。月曜日から土曜日にかけて営業しています。営業時間など詳細は直接お問い合わせ(0857-22-1668)をおすすめします。
Q3. ミシュランの評価はいつのものですか?
ミシュランガイド京都・大阪+鳥取2019年版に掲載されています。この版は鳥取初掲載の歴史的な版です。
Q4. 人気メニューは何ですか?
海鮮天丼(穴子・海老が定番)と、穴子天重が特に人気です。冬季限定の牡蠣天丼も毎年人気を集めています。また女将おすすめの海鮮かき揚げ弁当は、「天茶漬け」にするユニークな食べ方でも知られています。
Q5. テイクアウトはできますか?
はい、テイクアウトに対応しています。鳥取観光中にお弁当として持ち歩くことも可能です。混雑時は事前に電話で確認することをおすすめします。
Q6. 我天の衣の特徴は何ですか?
市販の天ぷら粉は一切使用せず、卵・小麦粉・冷水のみの自家配合です。卵の割合を多めにした独自のレシピで、衣そのものの美味しさにこだわっています。
Q7. 駐車場はありますか?
店舗専用の駐車場はありませんが、周辺にコインパーキングが複数あります。公共交通機関の利用が便利な立地です。
参考情報
- 天麩羅 我天 公式サイト(r.goope.jp/tempura-gaten/)
- ミシュランガイド京都・大阪+鳥取2019年版(ミシュランジャパン、2019年)
- 気象庁「平年値(1991-2020年)」各都市月別平均気温データ
- 鳥取県「令和7年国勢調査速報値」人口データ


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