Google Trendsのデータによると、「かき揚げ 作り方」の検索関心度は毎年12月にピークを迎える(Google Trends、2025年12月時点)。年末年始に天ぷらを揚げる機会が増えるこの時期、「具がバラバラになる」「ベチャッとして油っぽい」と悩む声が特に多くなる。
実はこれらの失敗には、すべて科学的な原因がある。そして原因がわかれば、対策は明確だ。
本記事では、かき揚げの作り方を基礎知識から手順、コツ、食材別レシピまで体系的に解説する。プロの天ぷら職人が実践する技法を紹介しながら、「なぜそうするとサクサクになるのか」を科学的根拠とともに紐解いていく。3月なら旬を迎えるしらすや菜の花のかき揚げも格別だ(気象庁 旬の食材データ参照)。
かき揚げの全体像:始める前に知っておくこと
かき揚げに取りかかる前に、まずはその基本構造を理解しておきたい。闇雲にレシピを追いかけるよりも、全体像を把握してから手を動かすほうが、はるかに上達が早い。
かき揚げとは何か
かき揚げとは、複数の食材を衣でまとめ、ひとつの塊として揚げる天ぷらの一形態である。語源は「掻き揚げ」、つまり食材を掻き集めて揚げることに由来する。江戸時代には屋台の天ぷら屋で、端材の野菜や小エビをまとめて揚げたのが始まりとも言われている。
一般的な天ぷらが食材単体の味と衣の食感を楽しむのに対し、かき揚げは複数の食材が組み合わさることで生まれる複合的な旨味が魅力だ。玉ねぎの甘み、エビの香ばしさ、三つ葉の風味――それぞれの個性が衣の中でひとつになる。
基本情報テーブル
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 難易度 | ★★★★☆(天ぷらの中では上級) |
| 調理時間 | 約30分(下ごしらえ含む) |
| 油の温度 | 170~180℃ |
| 衣の黄金比率 | 薄力粉 : 片栗粉 = 4 : 1 |
| 揚げ時間 | 片面2~3分、裏返して1~2分 |
| 最適な油 | 太白ごま油、またはサラダ油 |
| カロリー目安 | 1枚(約100〜150g)あたり約170~250kcal(カロリーSlism、2026年3月時点) |
| 保存 | 揚げたてが最善。冷凍保存は可能(2週間以内) |
かき揚げを成功させる鍵は、大きく3つに集約される。衣の配合、油の温度管理、そして投入の技術だ。この3つの要素について、次章から具体的な手順とともに掘り下げていく。
なお、天ぷら全般の揚げ方については天ぷらの揚げ方のコツで詳しく解説しているので、天ぷら自体が初めてという方はそちらも参考にしてほしい。
かき揚げの作り方【ステップ解説】
ここからは、かき揚げの具体的な作り方を5つのステップに分けて解説する。各ステップのポイントを押さえれば、家庭のキッチンでもプロに近い仕上がりが実現できる。
材料(2~3枚分)
- 玉ねぎ … 1/2個
- にんじん … 1/3本
- むきエビ … 6~8尾
- 三つ葉 … 1/2束
- 薄力粉 … 大さじ4(約36g)
- 片栗粉 … 大さじ1(約9g)
- 卵 … 1/2個
- 氷水 … 80~100ml
- 揚げ油 … 適量(鍋に深さ4~5cm)
- 打ち粉用の薄力粉 … 大さじ2
Step 1:食材の下ごしらえ(所要時間:10分)
かき揚げの成否は、下ごしらえの段階で半分決まると言ってよい。
まず重要なのは、食材の大きさを揃えることだ。大きさがバラバラだと火の通りにムラが生じ、一部は生焼け、一部は焦げるという事態になる。
- 玉ねぎ:薄切りにしてからほぐし、長さ3~4cmに揃える
- にんじん:3~4cm長さの細切り(マッチ棒程度の太さ)
- むきエビ:背ワタを取り、大きければ半分に切る。水気をペーパータオルで完全に拭き取る
- 三つ葉:3~4cmの長さに切る
食材の水気は徹底的に取る。 これは絶対に省略してはならない工程だ。水分が残っていると、油に入れた瞬間に激しくはねるだけでなく、衣がべちゃつく原因になる。切った野菜はペーパータオルで包んで軽く押さえ、余分な水分を吸い取っておく。
下ごしらえが済んだ食材をボウルに入れ、打ち粉として薄力粉(大さじ2)をまぶす。これが「つなぎ」の役割を果たし、食材同士の結着力を高める。粉をまぶしたら全体を軽く混ぜ、各食材に均一に薄力粉がまとわりつくようにする。
Step 2:衣を作る(所要時間:3分)
衣作りは「手早さ」と「冷たさ」がすべてだ。
別のボウルに卵を割り入れ、氷水を加えて軽く混ぜる。そこに薄力粉と片栗粉を合わせてふるい入れる。
混ぜ方が最大のポイントである。箸で軽く4~5回、縦に切るように混ぜるだけでよい。粉っぽさが残る状態が正解だ。なめらかなホットケーキの生地のように仕上げてはならない。ダマが残っていても構わない――むしろダマがあるくらいが理想的だ。
なぜ混ぜすぎてはいけないのか。その理由は後述する「衣の科学」セクションで詳しく解説するが、端的に言えば、混ぜれば混ぜるほど小麦粉のグルテンが形成され、衣が重くべちゃっとした食感になるからだ。
片栗粉を加える理由もここにある。片栗粉にはグルテンが含まれないため、薄力粉の一部を片栗粉に置き換えることで、グルテンの形成量を減らし、よりサクサクとした仕上がりになる。
衣の硬さの目安は、箸で持ち上げたときにサラサラと流れ落ちる程度。ドロッとしていたら氷水を少量足し、水っぽすぎたら薄力粉を小さじ1ずつ足して調整する。
衣ができたらすぐに使う。時間を置くとグルテンが発達してしまうため、衣を作ったら即座にStep 3に移ること。
Step 3:食材と衣を合わせる(所要時間:2分)
打ち粉をまぶした食材のボウルに、衣を回しかける。衣の量は「食材がうっすらコーティングされる程度」が適量だ。ドバッと衣をかけすぎると、揚げたときに衣ばかりが厚くなり、中の食材の存在感が薄れてしまう。
箸で底からすくうようにして2~3回混ぜる。ここでもゴリゴリ混ぜてはいけない。食材に衣がまんべんなく絡めばそれで十分だ。
Step 4:揚げる(所要時間:1枚あたり4~5分)
ここが本番だ。かき揚げの形が決まる最も緊張する工程である。
油の温度は170℃に設定する。 温度計がない場合は、衣を一滴落としてみて確認する。170℃なら、衣が鍋の中ほどまで沈んでからすぐに浮き上がってくる。底まで沈んで戻ってこないなら温度が低すぎ、表面で散ってしまうなら高すぎる。
投入の方法は以下のとおりだ。
1. お玉(または木べら)に、具材をひとすくい分のせる。 平たく広げるのではなく、やや厚みのある円形にまとめる。直径8~10cm、厚さ1.5~2cm程度が目安
2. 鍋の縁からそっと滑らせるように油に投入する。 高い位置から落とすと具がバラける。鍋肌に沿わせるイメージだ
3. 投入直後は絶対に触らない。 表面の衣が固まる前に箸で触ると、かき揚げが崩壊する。30秒~1分は辛抱強く待つ
4. 表面が固まったら、箸で2~3か所穴を開ける。 この穴から内部の蒸気が抜け、火の通りが均一になる。プロの天ぷら職人も実践する重要な技法だ
5. 2~3分揚げて裏面がきつね色になったら、ひっくり返す。 裏返したら1~2分で完成。合計4~5分が目安
油の温度は、具材を入れると一時的に下がる。 そのため、投入後は少し火力を上げ、170~180℃の範囲を維持するようにする。温度が低すぎると油を吸って重たくなり、高すぎると外は焦げて中は生という状態になる。
一度に揚げる枚数は、鍋の大きさにもよるが1~2枚が限界だ。一気に3枚も4枚も入れると油の温度が急降下し、すべてが油っぽいかき揚げになってしまう。
Step 5:油切りと盛り付け(所要時間:3分)
揚げ上がったかき揚げは、バットに敷いた網(揚げ網)の上に立てかけるように置く。平らに置くよりも、立てかけることで油がよく切れる。
ペーパータオルの上に直接置く方法もあるが、蒸気がこもって衣のサクサク感が失われやすい。理想は網の上だ。
揚げたてを天つゆ、または塩で食べるのが最も美味い。天丼にする場合は、揚げてすぐにタレをくぐらせて丼飯にのせる。
失敗しないためのコツ・注意点
かき揚げの工程を一通り解説したが、ここではよくある失敗パターンとその対策を整理する。自分の過去の失敗と照らし合わせてみてほしい。
失敗パターンと対策一覧
| 失敗パターン | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 具がバラバラになる | 打ち粉不足、衣が少なすぎる | 食材に薄力粉を先にまぶす。衣の量を適度に増やす |
| ベチャッと油っぽい | 油温が低い、揚げ時間が長すぎる | 170~180℃を厳守。温度計を使用する |
| 中が生焼け | 厚く作りすぎ、油温が高すぎる | 厚さ2cm以内に。170℃から徐々に上げる |
| 衣が重い・硬い | 衣の混ぜすぎ(グルテン形成過多) | 粉っぽさが残る程度に。4~5回だけ混ぜる |
| 油がはねる | 食材の水気が残っている | ペーパータオルで徹底的に水気を取る |
| 焦げやすい | 油温が高すぎる | 180℃以上にしない。火加減をこまめに調整 |
| 衣が剥がれる | 食材に打ち粉をしていない | 打ち粉をまぶしてから衣と合わせる |
さらに差がつく5つのコツ
コツ1:衣に酢を数滴加える
意外に思われるかもしれないが、衣に酢を2~3滴加えるとサクサク度が格段に上がる。酢の酸がグルテンの形成を抑制するためだ。味に影響するほどの量ではないので、風味が変わる心配はない。
コツ2:炭酸水を使う
氷水の代わりに冷やした炭酸水を使う方法もある。炭酸ガスの気泡が衣に細かい空洞を作り、軽い食感を生み出す。ただし炭酸水は常温に戻ると効果が薄れるため、使う直前まで冷蔵庫で冷やしておくこと。
コツ3:薄力粉はふるう
薄力粉をボウルにそのまま入れるよりも、ふるいにかけてから使ったほうが、ダマなく均一に混ざる。混ぜる回数を減らせるという点でも、ふるいの一手間は有効だ。
コツ4:ボウルを氷水で冷やす
衣を作るボウルの下に、氷を入れた大きめのボウルを置く。こうすることで衣の温度を低く保ち、グルテンの形成を遅らせることができる。プロの厨房でも見られる手法だ。
コツ5:二度揚げで完成度を上げる
一度目は160℃で2分揚げて取り出し、1分ほど休ませてから、180℃の油で30秒~1分揚げる。この二度揚げ法によって、外はカリカリ、中はふんわりの仕上がりになる。手間はかかるが、失敗のリスクを大幅に減らせる方法だ。
衣のサクサク感をさらに追求したい方は、天ぷらの衣をサクサクにする方法も併せて読んでいただきたい。衣の配合パターンを複数紹介しており、かき揚げにも応用できる内容だ。
食材別かき揚げレシピ3選
かき揚げの基本が身についたら、食材の組み合わせでバリエーションを広げよう。ここでは、定番から季節もの、海鮮まで3種のかき揚げレシピを紹介する。
レシピ1:玉ねぎと桜エビのかき揚げ(定番)
かき揚げの原点とも言える組み合わせだ。玉ねぎの甘みと桜エビの香ばしさが、最もシンプルにかき揚げの美味さを体現する。
- 玉ねぎ … 1/2個(薄切り)
- 桜エビ(乾燥) … 大さじ3(約10g)
- 三つ葉 … 少量(彩り)
- 衣 … 基本の配合(薄力粉大さじ3+片栗粉大さじ1+卵水80ml)
ポイント:玉ねぎは繊維に沿って薄切りにする。繊維を断つように切ると水分が出やすく、ベチャッとなりやすい。桜エビは乾燥のまま加えてよい。加熱によって香りが一気に立ち、かき揚げ全体を引き締める。
揚げ温度:170℃で3分→裏返して2分。桜エビは焦げやすいので、180℃を超えないよう注意。
レシピ2:海鮮かき揚げ(エビ・イカ・ホタテ)
天ぷら専門店の看板メニューになることも多い、贅沢な海鮮かき揚げ。食材それぞれの火の通り方が異なるため、切り方の工夫が肝になる。
- むきエビ … 6尾(1.5cm幅に切る)
- イカ … 1/3杯(1cm角に切る)
- ベビーホタテ … 4個(半分に切る)
- 大葉 … 2枚(粗みじん切り)
- 衣 … 基本の配合
ポイント:海鮮は特に水気が多い。ペーパータオルで2回は水分を拭き取ること。イカは切り込みを浅く入れておくと、揚げたときの反り返りを防げる。エビは大きいまま使うと火の通りにムラが出るため、必ず小さく切る。
揚げ温度:175℃で2分半→裏返して1分半。海鮮は火を通しすぎると硬くなるため、やや短めに。
レシピ3:春野菜のかき揚げ(旬の味覚)
3月に旬を迎える菜の花やたけのこ(走り)を使った季節のかき揚げ(気象庁 旬の食材データより)。苦味と甘みの対比が春の訪れを感じさせる。
- 新玉ねぎ … 1/4個(薄切り)
- タケノコ(水煮) … 50g(細切り)
- 菜の花 … 3~4本(3cm長さに切る)
- そら豆 … 6粒(薄皮を剥く)
- 衣 … 基本の配合
ポイント:新玉ねぎは通常の玉ねぎよりも水分が多いため、切った後に軽く塩をふり、5分ほど置いてからペーパータオルで水気を取ると扱いやすい。菜の花は茎と穂先で火の通りが違うため、茎を下にして油に投入すると均一に火が入る。
揚げ温度:170℃で3分→裏返して1分半。野菜は水分が多いため、しっかり揚げたほうがサクッと仕上がる。
プロの技を科学で読み解く:なぜサクサクになるのか
ここまで「混ぜすぎるな」「冷たく保て」と繰り返し述べてきたが、その背景にある科学を理解すれば、応用が利くようになる。レシピを暗記するのではなく、原理を知ることで、自分なりの工夫ができるようになるのだ。
グルテンの正体
小麦粉に含まれるタンパク質には、グリアジンとグルテニンという2つの成分がある。この2つが水と結合し、物理的な力(混ぜる動作)が加わることで、網目状の構造体であるグルテンが形成される。
グルテンはパンやうどんにおいては「コシ」を生む重要な存在だが、天ぷらの衣にとっては大敵である。グルテンが多く形成されると、衣は弾力のある膜のようになり、揚げても水分が抜けにくい。結果として、ベタッとした重い衣になる。
なぜ「混ぜすぎるな」なのか
混ぜれば混ぜるほど、グリアジンとグルテニンの結合が促進される。つまりグルテンが増える。4~5回混ぜるだけで止めるのは、グルテンの形成を最小限に抑えるためだ。
プロの天ぷら職人は、衣を混ぜるとき箸で縦に切るように動かす。円を描くように混ぜると生地全体に均一に力が加わり、グルテンが効率的に形成されてしまう。縦に切る動作であれば、力の方向が限定され、グルテンの形成が抑えられる。
なぜ「冷たく保て」なのか
グルテンの形成速度は温度に依存する。温度が高いほどグルテンは速く形成され、低温ではゆっくり形成される。 氷水を使い、ボウルを冷やすのは、グルテン形成の速度を遅くするためだ。
プロの厨房では、真夏であっても衣の温度は5℃以下に保たれる。家庭でも、氷水を使い、薄力粉を冷蔵庫で冷やしておくことで、この条件に近づけることができる。
片栗粉の役割
片栗粉(馬鈴薯でん粉)にはグリアジンもグルテニンも含まれない。つまり、片栗粉を混ぜてもグルテンは一切形成されない。薄力粉の一部を片栗粉に置き換えることで、衣全体のグルテン量が物理的に減る。
さらに、片栗粉は揚げると非常に軽い食感になる。唐揚げの衣に片栗粉が使われることが多いのも、同じ理由だ。かき揚げにおいては、薄力粉:片栗粉 = 4:1 ~ 3:1 の比率が良いバランスとされている。
酢と炭酸水の科学
酢(酢酸)を衣に加えると、生地のpHが下がり酸性に傾く。グルテンは中性~弱アルカリ性の環境で形成されやすいため、酸性にすることで形成が抑制される。わずか数滴で効果があり、味への影響はほぼない。
炭酸水に含まれる二酸化炭素は、加熱によって気泡となり、衣の内部に微細な空洞を作る。この空洞が衣を軽くし、サクサクとした食感を生む。ベーキングパウダーを加える方法も原理は同じだが、炭酸水のほうが気泡の分布が均一になりやすい。
プロの職人の技法
天ぷらの名店「てんぷら近藤」の近藤文夫氏(2019年「現代の名工」受賞、厚生労働省)は、かき揚げについて「衣は少なく、具材が主役であるべき」と語っている。プロのかき揚げは、衣でガチガチに固めるのではなく、食材同士が緩やかにつながり、ひと口ごとに食材の個性が感じられる仕上がりを目指す。
家庭では「崩れるのが怖い」という心理から衣を多めにしがちだが、打ち粉をしっかりまぶしておけば、衣は最小限で十分食材をつなぎ止められる。この「打ち粉→薄い衣」の二段構えが、プロの技法の核心だ。
実際にやってみると…
ここまでの理論と手順を踏まえて、実際にかき揚げを作る際のリアルな注意点を補足しておく。
最初の1枚は「試し揚げ」と割り切る
どれほど準備を整えても、最初の1枚は油の温度が安定していなかったり、投入の感覚がつかめなかったりする。最初の1枚は試作と割り切り、2枚目から本番のつもりで臨むと、心理的な余裕が生まれる。
温度計は投資する価値がある
「衣を落として確認」という方法は便利だが、正確さでは温度計にかなわない。料理用のデジタル温度計は1,000~2,000円程度で手に入る。かき揚げだけでなく、天ぷら全般、唐揚げ、フライにも使えるため、持っていない人はこの機会に入手をすすめる。
油の量をケチらない
家庭では油の使用量を減らしたくなるが、かき揚げには最低でも深さ4~5cmの油が必要だ。油が少ないと温度が不安定になり、かき揚げが鍋底にくっついてしまう。使用後の油は濾して冷暗所に保管すれば、2~3回は再利用できる。
天つゆと塩、どちらで食べるか
天ぷら職人の世界では、かき揚げは塩で食べるのが本筋とされることが多い。衣のサクサク感を損なわず、食材そのものの味を楽しめるからだ。抹茶塩や藻塩など、塩の種類を変えるだけで味わいが大きく変わるのも面白い。
一方、天丼にする場合は甘辛い天つゆが定番。そばやうどんに添える場合も天つゆとの相性がよい。つまり、食べ方に合わせて選べばよい。どちらが正解ということはない。
よくある質問
Q1. かき揚げがバラバラになってしまいます。どうすれば?
最も多い原因は打ち粉の不足です。食材に薄力粉を先にまぶしてから衣と合わせることで、食材同士の結着力が大幅に高まります。また、油に投入する際に高い位置から落とすのではなく、お玉にのせて鍋肌から滑らせるように入れると、形が崩れにくくなります。投入後30秒~1分は触らず、表面の衣が固まるまで待つことも重要です。
Q2. 衣に卵は必要ですか?卵なしでも作れますか?
卵なしでも作れます。卵を入れると衣にコクが出て、ややしっとりとした食感になります。一方、卵を省くと衣がより軽く、カリカリとした仕上がりになります。軽い食感を求めるなら卵なし、コクのある仕上がりを求めるなら卵あり、と好みで使い分けてください。卵なしの場合は、薄力粉+片栗粉+氷水のみで衣を作ります。
Q3. 揚げ油は何が最適ですか?
天ぷら専門店では太白ごま油(白いごま油)が最も多く使われています。クセがなく、高温でも安定し、揚げ物に軽い風味を与えます。家庭ではサラダ油やキャノーラ油でも十分美味しく仕上がります。ごま油とサラダ油を1:1でブレンドする方法も風味と経済性のバランスが良くおすすめです。オリーブオイルは風味が強く香りが天ぷらと合わないため、避けたほうがよいでしょう。
Q4. 冷凍保存はできますか?再加熱の方法は?
冷凍保存は可能です。粗熱を取り、1枚ずつラップで包んでからジッパー付き保存袋に入れ、冷凍庫で2週間以内に食べてください。再加熱はオーブントースターが最適です。200℃で5~6分加熱すると、衣のサクサク感がある程度復活します。電子レンジは衣がしなっとなりやすいため、避けることをおすすめします。凍ったまま加熱するよりも、冷蔵庫で自然解凍してからトースターで温めるほうが仕上がりが良くなります。
Q5. かき揚げに向いている食材、向いていない食材はありますか?
向いている食材は、水分が少なく、火の通りが早いものです。玉ねぎ、にんじん、ごぼう、さつまいも、桜エビ、しらす、コーン、枝豆などが定番です。向いていない食材は、水分が極端に多いもの(トマト、きゅうりなど)や、大きくて火の通りが遅いもの(じゃがいもの大きな塊など)です。葉物野菜(ほうれん草、レタスなど)は水分が出やすく、かき揚げにはあまり適しません。ただし大葉は例外で、香りのアクセントとして少量加えるのには適しています。
Q6. 油の温度が安定しません。コツはありますか?
まず、油の量を十分に確保することが基本です。油が少ないと温度変動が大きくなります。深さ4~5cm以上を目安にしてください。また、かき揚げを入れるときは1枚ずつにすると温度の急降下を防げます。具材を入れたら少し火力を上げ、油温が170~180℃の範囲に戻ったら火力を元に戻すという調整を行います。料理用デジタル温度計を使えば、リアルタイムで温度を確認できるため、安定した揚げ作業が可能になります。
Q7. 天ぷら粉を使ってもよいですか?
はい、市販の天ぷら粉を使うことも有効な選択肢です。天ぷら粉には膨張剤(ベーキングパウダー)やでん粉が配合されており、混ぜすぎてもグルテンが形成されにくい設計になっています。初心者の方や失敗を減らしたい方には、天ぷら粉からスタートして、慣れてきたら薄力粉と片栗粉で自分好みの配合を探求するという段階的なアプローチもおすすめです。
まとめ
かき揚げは、天ぷらの中でも特に繊細な技術が求められる料理だ。しかし、その原理を理解し、正しい手順を踏めば、家庭でもプロの味に近づくことは十分に可能である。
本記事の要点を振り返る。
- 衣は混ぜすぎない:粉っぽさが残る程度に4~5回混ぜるだけ。グルテンの形成を最小限に抑えることがサクサクの鍵
- 温度管理は徹底する:170~180℃を厳守。温度計の使用を強く推奨
- 食材の下ごしらえを怠らない:大きさを揃え、水気を取り、打ち粉をまぶす。この三段階がバラけ防止の根幹
- 投入時は鍋肌から滑らせる:形を崩さないための基本動作
- 固まるまで触らない:忍耐が美味しいかき揚げを作る
- 片栗粉、酢、炭酸水:科学的に裏付けられたサクサク向上テクニックを活用する
かき揚げの上達に近道はない。だが、毎回の揚げ作業で「なぜこうなったのか」を考え、次に活かす。その積み重ねが、いつしか鍋の前に立った瞬間に「今日は上手くいく」と確信できる境地へとつながっていく。
まずは玉ねぎと桜エビの定番かき揚げから始めてみてほしい。揚げたてのサクサクを頬張ったとき、かき揚げの奥深さに魅了されるはずだ。
天ぷらの種類について網羅的に知りたい方は「天ぷらの種類一覧|定番から通好みまで完全ガイド」も参考にしてほしい。また、衣のレシピを深掘りしたい方には「天ぷら衣レシピ5選|黄金比率と作り方のコツ」がおすすめだ。
参考情報
- 工学院大学 先進工学部 応用化学科「サクサク天ぷらの化学」(kogakuin-applchem.jp)
- 日清製粉グループ「現代の名工・てんぷら近藤の究極のかき揚げのコツ」(nisshin.com)
- カロリーSlism「かき揚げのカロリー・栄養成分」(calorie.slism.jp)
- 厚生労働省「卓越した技能者(現代の名工)表彰」(mhlw.go.jp、2019年度)
- 白ごはん.com「かき揚げのレシピ/作り方」(sirogohan.com)
- Google Trends「かき揚げ 作り方」検索トレンドデータ(2025年12月ピーク、2026年3月取得)
- 気象庁 過去の気象データ「旬の食材」(2026年3月時点)


コメント